地底たる謎の研究室

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現生オウムガイ類は生きた化石ではない。



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題名:現生オウムガイ類は生きた化石ではない。
報告者:ダレナン

 本記事は、この記事の続きです。

 先の記事にてやり貝といき貝の育て方、から、オウム貝というヒントを得て、アンモナイト目も含めた、現生オウム貝への進化図を調べた。そして、いわば生きている化石とも言われていたオウム貝のその存在性から、彼らのどこにやり貝といき貝を見出せるのか、その生き様について探ることを試みた。その結果、この記事から次貝(回)へと続いた本記事では、現生オウムガイ類(今まではオウム貝と表記したが、ここでは生物学的な観点から、オウムガイとすべてカタカナ表記にしたい)は、進化していないの、「かい(貝)。」というこの記事の貝(回)から、別の何かが得られた。その何かとは、表題に示すように、「現生オウムガイ類は生きた化石ではない。」という貝(解)である。そうして、オウムガイ(すべての頭足類も含める)の学の奥深さに、やり貝といき貝を筆者なりに見出しつつある。これも、オウムガイのおかげであろう。
 ここで、以後の話を分かりやすくするために、オウムガイの構造について示したい。図Aは側面図、図Bは正面断面図となる。ここで、図Aに関してはこの記事でもカラー写真で示したように、オウムガイらしい外観である。そして、図Bに目を移すと、ここで、重要な構造に、殻にある隔壁(かくへき)と体管(および連室細管)がある。殻自体の独自性や形状の魅力については、いずれ別の記事内で記述したいが、この部分にオウムガイの大きな特徴が存在する。
 東京大学大学院理学系研究科の名誉教授である棚部一成博士2)は、オウムガイの殻の、この隔壁について酸素同位体比の研究を行い、隔壁の7~8番目を境に酸素同位体比が、それまでの薄い値から濃い値に急激に変化することを認めている。そして、そのことから、隔壁1~7番目を孵化以前、隔壁8番目以降をそれ以後として、孵化以前にできた隔壁の薄い同位体比は海水が薄いことに起因することを発見し、オウムガイ類は比較的高温の浅海で産卵し、孵化後にすぐに低水温の深所に垂直移動したと結論づけた。しかしながら、白亜紀の化石オウムガイ類ではこれが認められず、このことから、白亜紀~古第三紀のオウムガイ類は全生活史を浅所で生息していたことをも指摘した。



図 現生オウムガイ類の体制1)

そして、その貝(解)として、現生オウムガイ類の深所への移動は、新生代以降に顕著になってきた浅所での高い捕食圧を逃れるための適応戦略、すなわち、生き残りの条件の一つであったと考えている。言い換えると、オウムガイ類は、進化していない生きた化石ではなく、適応戦略というやり貝といき貝を見出すことで、今の時代まで生きてきた、その生き様を脈々と見せつけているのである。

1) http://www.paleo-fossil.com/paleo/p_nautilus1.html (閲覧2019.2.26)
2) 棚部一成: 比較発生学的にみたオウムガイ類の原始性. FOSSILS 56: 42-46, 1994.

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