題名:3000メートル級の山に匹敵する愛の痛み
報告者:ダレナン
本物語は、この物語の続きです。
月日が経つのは思ったよりも早い。あれからもう3年以上も経った(この物語)。今ごろ、琉花はどこにいるのだろうか。晴美さんはどこに行ったのだろうか。
その後、1回だけ琉花に逢えた(この物語)。でも、それっきりだった。それからも、琉花のアパートに足を運び、そこに琉花がいる気配はした。何度も連絡もした。次第に、二度と琉花と逢うことも、話すこともできないかもしれない、そう思い始めたある日のこと、琉花のアパートの扉の前で立ち尽くしていると、大家さんらしきがやって来た。そして、僕にこう告げた。
大家:「あー、そこの方なら先日引っ越ししたでよ」
「どこにいったかご存知ですか?」
大家:「さぁー、それは、わかんねーべや。「今月の家賃はそのままで結構です。急ですみませんが、このまま引っ越しします」とのことだったべ。なんかあったんだべか。随分とやせて、目の周りがはれていたでな…。あんちゃん、知っとんのか、その人のこと…」
琉花がいなくなったのと同時に、晴美さんもアパートに戻っていないようだった。それは、まるで、僕の目の前から、2人が消えたみたいな現象だった。僕は、琉花に対しても、晴美さんに対しても、純粋なこころを踏みにじった。その代償は大きかった。その後、僕のこころは満たされない痛みがつきまとい、それを埋めるかのように山に登り始めた。琉花といっしょに登る約束したあの大山に(この物語)。1700メートルほどの山だが、独立峰で日本海に接して、いったん天候が崩れ始めた際の厳しさは、3000メートル級の山に匹敵する厳しさになる(図)1)。別に、僕は、登山に目覚めたわけではない。愛に対して真摯に向かい合いたい(この物語)。愛という山に、痛みに。その一心だった。
図 大山1)
アサリ(カツオの妹):「兄ちゃん。また、今度、山行くの? それも、こんな時期に」
「ああ、まあね」
アサリ:「なんか修行してるみたい…。あっ、そうそう、今日ね、コンブチャン(この物語)としまむらと美容院に行って来たんだー。ねっ」
コンブチャン:「アサリちゃんのおかげ、毎日が楽しい、ねっ」
アサリ:「コンブチャン。このままずっとイソベ家にいれば…。ついでに、兄ちゃんのお嫁さんにでも…なーんて言ってみたりして、えへ」
1) https://tourismdaisen.com/climb/fuyuyama/ (閲覧2020.2.19)
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