題名:12AU7Aライトセーバー
報告者:ダレナン
本物語は、この物語の続きです。
その老人は365への怒りをあらわにした。わしの創った真空管を使わんからAIの学習機能が劣っとるんや、と…。かと思うと、途端ににこにこして、そうじゃ君の名はなんと申すと僕に聞き返した。僕の名はキザワ・ミチオですと言い返すと、そうじゃったそうじゃった、ミチオくんじゃったな、すまんすまん、年取るとどーもいろんなことを忘れてしまいおってからに、と言った。その後、ぽつりと目を細めてわが友わが愛弟子、ジョブスくんは元気にしておるかな…、と遠くを見つめた。
僕は老人に真実を伝えるべく、スティーブ・ジョブスさんは、2011年10月5日に膵臓がんに伴う呼吸停止によって亡くなった1)ことを伝えた。そうか、そうか、そうじゃったか…、マスター・オブ・チューブのわしの修行にも耐え抜いたあのジョブスくんが、ついに亡くなったのか…、と悲しげな表情を見せた。
「マスター・オブ・チューブ界の最後の戦士じゃったな、ジョブズくんは…」
「マスター・オブ・チューブ界…?」
そうか、君は知らんのか…、そうじゃな、無理もあるまい。ジョブズくんはマスター・オブ・チューブ界においてマルチタッチなるフォース(iPhone)を覚醒させたわけじゃからな。それこそが今振り返ると、新しい電子時代の幕開けじゃった…。
「でも、そこにチューブ(真空管)のテクは使われていないのでは…」
と僕は、ついぽつりと告げると、
「なななんだと。だまらっしゃい、君はなんて失敬なやつだ」
と声を震わせ、老人が手に持っている12AU7Aがより一層赤々と灯された。そして、365の代替テキストは、この画像(図)に対して老人の気持ちをさかなでるかのように「瓶の中に入っている」と告げていた。それをチェックすると老人は激怒した。
「瓶、瓶じゃと。これが瓶じゃと…、365は何ぬかしとるか、365のたわけが…」
と天高く12AU7Aを振りかざした。勢いよく12AU7Aからビームが飛び出た。それはまるでビームサーベル、いやライトセーバーが現れたかのようだった。その後、老人は何度か12AU7Aライトセーバーで素振りすると、怒りの気持ちが落ち着いてきたようで、
「おっ、すまんすまん。わしはまだまだ道を極めておらぬから…」
と言い、ブーンという音とともに、ライトセーバーは元の12AU7Aの形に戻っていた。
「愛弟子ジョブズくんとよく交えたこの剣の刃も、随分と怒りに任せて切れ味が悪くなってしもうた。やっぱり年にはかなわんのー」
図 12AU7A2)
1) https://ja.wikipedia.org/wiki/スティーブ・ジョブズ (閲覧2021.6.30)
2) https://www.kitarapaja.com/tad-12au7_1 (閲覧2021.6.30)
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